オルネー Aulnay-de-Saintonge |
4000ヘクタールもの地を占める森の中に佇むオルネーの街は、ガロ・ロマンの時代にその歴史は始まります。 |
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エグリーズ・サン・ピエール Eglise Saint-Pierre d'Aulnay-de-Saintonge | |
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参考 Référencesとリンク Liens | |
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アクセス Accès |
Eglise Saint-Pierre d'Aulnay-de-Saintonge |
ガロ・ロマン期の異教の寺院があった場所に、現存の教会堂は1120-1140年(又は1119-1135年)の間に建てられました。建物全体の完成までに50-60年かかったとされます。 豊かな彫刻の装飾で知られています。フランスのロマネスク教会堂の中で最も完成されたもののひとつ、と評価されています。 熟練した職人達による彫刻装飾と均整のとれた教会堂のプロポーションが魅力です。 |
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オルネーのサン・ピエール教会は、「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」(トゥールの道)に位置する教会堂として、ユネスコ世界遺産に登録されています。 L'église Saint-Pierre d'Aulnay-de-Saintonge est inscrite sur la liste du patrimoine mondial de l'UNESCO au titre des chemins de Saint-Jacques-de-Compostelle en France (via Turonensis/voie de Tours) またこのサン・ピエール教会は、「フランス歴史的記念物(Monuments Historiques/MH)」に指定されています。 Elle est aussi classée au titre des monuments historiques (MH). |
柱頭彫刻のシンフォニー。西正面上部には、18世紀末までキリスト教を公認したコンスタンティヌス1世の像があったそうです。バットレスは15世紀に付け加えられました。この愛すべき教会堂、苦労してでも訪れる価値アリ、です。 |
■Extérieur | |
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Flanc nord |
Chevet |
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Flanc sud |
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Clocher |
右端に見える翼廊に、後に挙げる最も有名な南入口があります。 |
鐘楼は12世紀に建てられましたが、18世紀に造り替えられ二層目の開口部は縦長になっています。三層目は16世紀に付け加えられました。 |
■Trois ateliers de sculpture | ||
オルネーの教会に施されている彫刻は、3つのアトリエにより制作されたとされています。見ればその「手」の違いははっきりわかります。 | ||
・グループ1 |
: | 後陣外部、南翼廊入り口、トランセプト交差部と後陣祭室の柱頭 ・・・圧倒的なオリジナリティ性に溢れています。 |
・グループ2 |
: | 南翼廊上部、身廊の柱頭 ・・・植物モティーフはローマ時代のものに倣っている一方で、人間や動物の顔や身体は、全く新しい方法で表現しています。人物や動物の密集度、柱頭の対称性は、「枠の原則」に従いながらも、限られた空間から飛び出してくるような勢いを感じます。 |
・グループ3 |
: | 西正面入り口 ・・・幾何学模様を多用しながら、互いに関連しあうモチーフをミックスして表現しています。 |
■Extérieur : façade occidentale | ||
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3つの入り口が並ぶスタイルは、ローマの凱旋門に着想を得たものとされ、ポワトゥ、サントンジュ、アングレーム周辺でよく見られます。北(左)の入り口は人の死を、南の入り口は永遠の幸福を表します。つまり、世俗世界から、中央の入り口を通って神の世界に入る、と読み解かれます。アーチは中央は半円筒、左右は尖頭アーチで変化が見られます。 |
■Extérieur : baie aveugle nord de la façade | ||
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磔刑の図から想像されるように、この北側の入り口は「死」を表します。 |
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Tympan : saint Paul crucifié tête en bas |
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磔刑にされているのは使徒サン・ポールで、この逆十字のスタイルで殉教させられたとされます。天使が両脇で衣の裾をたなびかせていて踊っているかのようです。アーキヴォルトとフリーズにも見事な装飾が施されています。アーキヴォールト2層目の左端のみ、動物が彫られています。アーキヴォールトの内側までしっかり彫刻が施されています。 |
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Chapiteaux |
Chapiteaux |
■Extérieur : baie aveugle sud de la façade | ||
南側の入り口タンパンには、「永遠の幸福」が表現されています。 |
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Tympan : le Christ et deux saints Pierre et Paul |
サン・ピエールとサンポールの間にキリストの姿があります。ここのアーキヴォールトも、内側までしっかり彫刻が施されています。 |
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■Extérieur : portail central de la façade | ||
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中央の入り口にはタンパンはありませんが、アーキヴォールト各層に異なるテーマ、ストーリーが展開されています。 |
1ère voussure : un agneau pascal au centre, entouré pas six anges |
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2e voussure :la Bataille de l'âme ( le combat des Vertus contre les Vices ) |
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3e voussure : l'histoire des vierges sages et folles dans l'évangile de Matthieu |
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4e voussure : les travaux des champs tout au long des saisons, mêlés au signe du zodiaque |
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最も内側の層の中央に、6人の天使に囲まれたAgenau pascal(神のシンボル)が見えます。次の層は、美徳と悪徳との戦い(擬人化された慎重、正義、吝嗇等といった観念が擬人化されて表現)、3層目はマタイ伝の中にある「10人の処女達」(5人の賢い娘達と5人の愚かな娘達)のエピソードがテーマです。4層目には月々の労働のイメージと黄道十二宮のシンボルが描かれています。 | ||
尚、美徳と悪徳のアレゴリーについて、パルトネーのノートル・ダム教会 Eglise Notre-Dame-de-la-Couldre de Parthenayのファサード入り口のを飾る彫刻との類似が指摘されています。。 |
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Modillons |
■Chapiteux à l'extérieur | |||
教会堂の外側を飾る柱頭は、鐘楼にあるものを除いても126にものぼるそうで、正確な数字はいまだ判然としていないそうです。 | |||
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■Extérieur : croisillon sud | ||
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南翼廊は見どころに溢れています。 まず、南翼廊の上層部分も凝った装飾が施されています。 西ファサードを手がけたアトリエとは異なる第2のグループにより制作されました。 |
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翼廊の破風に大きくわたるアーチの中に、更に3つのアーチがあり、中央のより大きなパートには開口部があります。この中央のアーチは尖頭型になっています。アーキヴォールト、小円柱の柱頭にもしっかり彫刻が施されています。中央のアーキヴォールトに見える人物達の表現は角張っています。 |
■Modillons de la croisillon sud |
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ここに並ぶモディロンも有名で、これは下の入り口を手がけた第1のグループによるものです。 |
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■Extérieur : portail sud | ||
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ファサードの入り口の装飾も見事ですが、南翼廊にある入り口こそが、この教会堂の名を世に知らしめています。1130年頃制作されました。 尚、西ファサード、この上の破風部分の彫刻を施したアトリエとは更に異なるアトリエにより制作されたとされます。 |
1ère voussure : trois griffons et trois sphinx ou centaures |
2e voussure : les douze apôtres et les douze grands prophètes d'Israël |
3e voussure : les vieillards de l'Apocalypase |
4e voussure : Physiologus (sirène, griffon, centaure, cyclope, chimère, charadrius, etc) |
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内側の層はビザンティン風で、グリフォンやケンタウロスが見えます。2層目は12使徒と預言者達、3層目には黙示録の長老達の彫刻が施されています。されています。4層目のアーキヴォールトは最も有名で、「フィシオロゴス博物誌」をテーマに、人魚、グリフォン、ケンタウロス、ひとつ目のサイクロプス、ギリシャ神話のキマイラ等の空想の動物が風刺的に表現されています。 |
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Intrados : des Atlantes アーキヴォールトの内側までしっかり彫刻が施されています。 |
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■Extérieur : abside | |
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後陣にある開口部のうち、とりわけ主軸にあるこの開口部が最も装飾に富んでいます。 後陣の彫刻装飾は、南翼廊入り口と同じグループにより制作されました。 |
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Modillons |
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Baie de l'abside |
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Des hommes dans des lianes : l'homme qui doit lutter péniblement pour se dégager de l'emprise du mal." 開口部両脇には、蔓草に絡まるようにして人物が描かれています。これは、「悪の手から逃れるために苦労して戦わなければならない」と私達を諭しているそうです。 Rinceaux 小円柱が載る部分にも注目です。頭は人間、腰から下は蛇(又は人魚)の生き物が、ハート型に向き合っていて、その間にある柱の柱頭にまで彫刻が施されています。 |
■Modillons | ||
もはや、彫刻職人達が腕前・エスプリを発揮する場として教会堂を余すところなく利用していたのではないかと思えてきます。彼らが嬉々としてのみを振るう姿が目に浮かんでくるようです。 |
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■Intérieur | |
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5ベイにわたる身廊の天井には、尖頭型のヴォールトが架けられています。身廊には開口部が殆どなく、採光は側廊の窓からに限られるため、堂内は暗いです。 | |
Nef |
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身廊をトランセプト交差部から見た図です。全体のプロポーションとして、身廊の幅は狭いです。西側上部に身廊の唯一の開口部があります。 | Bas-côté |
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側廊の天井はとても高く、身廊同様、尖頭型ヴォールトで覆われています。側廊の幅もまた、とてもほっそりとしています。この側廊のスタイルは、この時代のポワトゥ地域の教会堂の特徴です。 | ||
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Chapelle |
Chapelle : saint Pierre |
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サン・ピエールの像は15世紀に制作されました。 |
■Chapiteaux 1 |
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教会堂の内部だけで、柱頭彫刻は106を数えるそうです。押し寄せる感動の波に、もはや私の手に負えなくなりました。写真にこだわった美しい力作のサイトが幾つかありますので(「関連・参考リンク Liens」のページで紹介しています)、そちらでどうぞ存分に堪能して下さい。尚、堂内の柱頭彫刻は、南翼廊入り口等を手掛けたグループ1と、南翼廊上部を担当したグループ2により制作されました。 |
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Eléphants |
Le vieil homme |
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La chasteté |
Les oiseaux monstreux |
Msaques diaboliques |
Msaques diaboliques |
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Une chouette (des monstres se nourrissent des ailes de la chouette) | La conversion intérieure |
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Croisée / Coupole sur pendentifs クーポルはペンデンティブ技法によります。この上に四角形のプランの鐘楼が聳えます。 |
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Croisillon nord |
Croisillon sud |
Bénitier 洗礼桶を支える部分の彫刻は、12世紀に制作されました。南翼廊の入り口辺りにあります。 |
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■Chapiteaux 2 | |||
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Le lissage des plumes |
La chute |
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Les passions dévorantes les forces Maléfiques. |
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Lions affrontés |
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Le mauvais choix |
Samson et Dalila |
La victoire du Malin |
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Choeur これまで数多の彫刻装飾に見てきた私達にとって、内陣はあまりにシンプルに映ります。古の人々は、神の家たる教会堂を許される限り飾り立てようとしたわけですが、この教会堂に関しては、この言わば装飾の空白の部分により強く、神聖な空気を感じます。 主祭壇の前に立ってはじめて、これまでの建築や装飾への感動はあくまで序章であることを理解し、ここではじめて、雑念を排除し、神、或いは自己の深淵との対峙ができるように感じました。シトー派とは無縁ですが、彼らのモットーに通じる「何か」を感じました。 内陣は縦に長い楕円型のプランです。 |
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♠参考 Références♠ |
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♦Eglise St-Pierre d'Aulnay-de-Saintonge (guide) | |
♦L'Abécédaire de l'art roman en Poitou-Charente Rémy Prin Gesteédition | |
♠リンク Liens♠ | ||
♦Office de tourisme Saintonge Dorée | http://www.saintongedoree-tourisme.com/ |
♠アクセス Accès♠ |
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♦SNCFポワティエ駅 Gare de Poitiersから、サン・ジャン・ダンジェリー駅 Gare de Saint-Jean-d'Angélyまで、TGV/TERで約2時間10分。 | |
サン・ジャン・ダンジェリー駅より、タクシー又は自転車を利用。 |