Balade dans l'Art Roman en France



Auteur : WK2
ロマネスク探訪の旅のコツ ASTUCES DU VOYAGEAstuces du voyage
ロマネスク探訪の旅のコツ  Astuces du voyage
 フランスの地方に点在するロマネスク教会堂をまわる場合、レンタカーを借りて自分で走るのが理想でしょう。しかし交通事情が異なる不慣れな土地では、何かと不安がつきまとうものです。
 このページでは、私=サイト主が個人でフランスの方々の街を巡った経験をもとに、「公共交通機関を利用してロマネスクの教会堂を巡る旅のコツ」について綴ろうと思います。大手出版社等が提供している一般的なガイド(ブック)に詳しい説明があるような事項についてはそちらに任せ、あくまでロマネスクをテーマとしたオリジナルの旅を実現させたい方のお手伝いができたらという思いから、フランス入国、フランス国内での移動(鉄道、バス、自転車)、滞在をメインのテーマとして纏めました。あくまで個人的見解に基づいたページですので、その点はご了承下さい。また私の中で当たり前のようになっているが故に、上手く説明できていない点があると思います。わかりづらい事項がありましたら、その旨どうぞご連絡下さい。反省の上、改めたいと思います。

 内容については随時加筆していく予定ですが、その他何か特に知りたいこと、旅のプランニングにあたってのご相談等がありましたら、「コンタクト Contact」のページよりご連絡下さい。可能な限り回答いたします。



 このサイトでは、街ごとに教会堂・ミュージアムを紹介していますが、それぞれにその街へのアクセス方法と、現地のオフィス・ド・トゥーリズムのサイト、及び可能な限り紹介している教会堂・ミュージアムのサイトへのリンクを載せています。旅のプランニングにお役立て下さい。
 また、「関連・参考リンク Liens」のページでは、鉄道やバス等の移動や宿泊予約サイトについてもリンクを載せています。併せてご活用下さい。
 また、「ロマネスク探訪の旅のモデル Modèles du voyage」のページで、サイト内で紹介している(又は紹介予定の)教会堂及びミュージアムがある街・コミュニティを、ホーム/拠点となりうる街ごとにグループ分けしています。オリジナルの旅をプランニングするためのたたき台としてご活用ください。
Basilique Saint-Julien de Brioude

Page parlant uniquement enjaponais

Cette page est destinée aux Japonais qui envisagent de visiter les églises romanes dans les différentes régions françaises.

   

■  Index  ■
1. はじめに:個人旅行のススメ
 6.いざ教会堂へ
    A. 歩く
2. フランスへの入国:空路と陸路   B. タクシーの利用
 A. パリの空港から空路での地方都市への移動    i. 都市部とそれ以外の地域でのタクシーの利用について
 B. パリの空港から陸路での地方都市への移動    ii. タクシーで周遊する
     iii. ライドシェアサービスConvoiturage について
3. フランス国内の長距離移動   C. 自転車をレンタルする
 A. 地方都市間の移動:空路と陸路    i. サイクリングのススメ
 B. 鉄道による地方都市間の移動    ii. どこで借りるか、レンタルの流れ
  i. 鉄道のチケットの購入方法    iii. 利用頻度が高いならば
  ii. 乗車当日チケットをどうしても購入できない場合    iv. 電動アシスト自転車
  iii. 鉄道の車内、駅構内のトイレ事情    v. 備品について
 C. 長距離バスについて    vi. サイクリング・ルートの計画
  i. 長距離バスの魅力・利点    vii. その他:天候について
  ii. 長距離バス利用にあたって諸々   D. 都市部での自転車シェアリング・サービスについて
  iii. 長距離バスのチケットの購入方法   E. 現地ツアーを利用する
  iv. 座席について   F. 旅のツール・Google Mapsやコンパスを活用する
 D. 市内バス・中距離バスの場合   G. 飲み物・食べ物の携行
   
4. どの教会堂へ、いつ行くか  7. コンポステーラ巡礼を検討されている方へ
 A. 教会堂へ  
 B. ミュージアムへ  8. 教会堂にて
 C. ヨーロッパ文化遺産の日 Journées du Patrimoine   A. マナー
 D.アクセス方法の検討   B. 写真にこだわる方へ
   
5. 滞在する  9. ことば・コミュニケーション
 A. どの街に滞在するか:「ホーム」とする街を決める  
 B. 宿泊先を予約する  10. トイレ事情
 C. フランスのホテル事情・ホテルの種類
  i. ホテルを選ぶ基準
  ii. 建物の設備を確認する
  iii. 一般ホテルと滞在型ホテル・レジデンス
  iv. 民泊
  v. ホテル・民泊以外の宿泊スタイル
   



 1. はじめに:個人旅行のススメ

 海外旅行をしようと思い立った時、まずは旅行会社等が主催するツアーに参加するのか、自分で諸々手配して個人旅行とするのかというところから始まるのだろうと思います。実際の数字をもっているわけではありませんが、「ロマネスクの教会堂を巡るツアー」のようなものの数は実に数少ないのではないでしょうか。仮に見つけたとして、その中に自分が訪れたいと思っていた教会堂が含まれていて、その他のメニューや金額等諸条件についても納得できるならばそれに参加するのは勿論よし、しかしそんな幸運に恵まれる可能性はどのくらいのものでしょう?
 何かにつけ海外の個人旅行は不安だから、ツアーがないなら実際の旅行は諦めるという方、諸々自分で手配するのは面倒だから諦めるという方、折角の旅に出たいというワクワクする思いを無下に袖にしてしまう、自分を満足させるための手間を厭うなど、実に残念なこと、勿体ないことだと思いませんか?
 ロマネスクというニッチなカテゴリーでも、昨今は書籍やインターネット上で美しく迫力に満ちた画像や動画に簡単に出会うこともできます。しかし憧れの教会堂を何らかのフィルターを通して見る時と比べ、実物を目の前にした時に覚える感動は、そこから得る満足感は、桁違いに大きなものです。時には妥協しなくてはならない場面も出てくるでしょうし、図らずも自分の限界を知ることもあるかもしれません。しかしそれも含めて「旅」です。
 実際に行ってみたい、見てみたいという思いを抱えたまま悶々と過ごす日々からそろそろ卒業し、あなたもあなただけの旅の計画をたてませんか?


 つい不安が先行してしまうという方へ。大前提として知っておいて頂きたいなと思うことは、まずそもそも旅は思い通りにはいかないもので、そしてそれが旅の醍醐味のひとつでもあるということです。
 恐らくロマネスクに興味がある方は、多かれ少なかれそれなりの人生経験を積まれてきた方と個人的に確信しているのですが、その経験をもってすれば、思い通りにならないこと、多少のアクシデントやトラブルに見舞われても、機転を利かせてクリアできるはずです。日本で普通に生活していても日常的に大小何らかのハプニングに遭遇しては乗り越えてきたきたことでしょうし、これからも遭遇する可能性はあります。なぜ日本でないからというだけで旅を諦める理由になるでしょう?
 予定が狂ってしまってもパニックにならないよう、可能であれば第2のプランをイメージしておき、最低でも宿に戻ることができれば、次の街に辿り着くことができればよい、究極帰国のフライトに乗ることができればよい、そのくらいの心持ちで大きく構えて頂けたらな、と思います。第2のプランを考える余裕はない、と思われるかもしれませんが、自分で調べ、熟慮した上で決めたプランであれば、そのプロセスの中で/過程において、様々なシチュエーションにおいて幾つもの選択肢を何度もふるいにかけ、天秤にかけ、そんな作業を繰り返してきた筈ですから、これがだめならあの手がある、ということを大体の場面において容易にイメージできるのではないでしょうか?
 勿論どんなに周到に準備しても、全ての不安を打ち消すことはできません。しかし出発前に情報収集を重ねることで軽減させることはできます。折角の旅ですから、是非冒険心と遊び心をもって臨んで頂けたらなと思います。旅は計画することから始まります。そして自分で丁寧に織りあげていく旅は、きっと人生における貴重な経験のひとつとなるでしょう。
 但し無鉄砲な旅をおすすめしているわけではありません。
 以前パリにて、夜の9時頃に卒業旅行中の日本人の男子学生4人に呼び止められ、相談を受けました。その内容は、自分達は今パリに着いたばかりで、これからドイツに行きたい、そもそもドイツが目的地なのだが、パリ行きのフライトの方が安くチケットを購入できたので、とりあえずフランスに来た、ここからベルリンへはどう行ったらよいのか、ということでした。更にドイツで複数の地方都市を周りたいようでしたが、ベルリンのガイドブックを1冊持っているのみで、私がドイツを訪れたことがあると知ると、ドイツ国内の移動は鉄道で可能なのか、他のおすすめのドイツの街はあるか、ベルリンを含め観光スポットを教えてほしい等々、質問攻めに遭いました。
 ちなみにその時は、明朝にパリ東駅に行って鉄道チケットを購入するよう伝え、丁度持ち歩いていた使い古しのヨーロッパのガイド本を渡し、私が利用しているホテルの住所を教えてその夜はパリで一泊するようすすめて別れました。
 彼らにはすっかり呆れ果てた、というのが本音です。これは極端な例ですが、私は彼らのような旅をおすすめしているわけではありません。事前の情報収集は、旅の基本です。どうぞお間違いのなきよう。





 2. フランスへの入国:空路と陸路

 フランスを旅する場合、空路でパリのシャルル・ド・ゴール空港やオルリー空港にて入国するのが一般的です。近隣諸国でフライトを乗継いで、リヨンやマルセイユ等の空港で入国することもあるでしょう。
 しかし、陸続きの周辺諸国から、敢えて陸路で入国するのも、これまたヨーロッパの旅の醍醐味のひとつです。たとえばドイツ西部を周ってから鉄道でディジョンに入って、ロマネスク建築におけるカロリング朝ルネサンスの潮流を追う、或いは、バルセロナ周辺を巡った後に鉄道やバスでペルピニャンに入り、カタルーニャ・ロマネスクの北部と南部の特徴を探求する、というのも興味深い壮大なロマネスクの旅のテーマとなります。ロマネスク・ファンにとって、なんとも贅沢な旅ではないでしょうか。
 その他各周辺国からの陸路でのアクセスも容易です。ベルギーやスイスからでも、鉄道やバスの便の多さ、移動時間の短さに驚くことでしょう。イギリスからであれば、ユーロスターに限らず、フェリーでドーバー海峡を渡るのもまた一興です(長距離バスを利用すると、ドーバーをわたる際にフェリーにバスごとのって、その間乗客は船内で自由に過ごすことができるという便も多くあります)。但しイタリアについては、鉄道の遅延が激しいという印象を拭えません。イタリアからフランスに入国する場合には、空路、陸路であれば長距離バスを選ぶ方が無難かもしれません。



 A. パリの空港から空路での地方都市への移動

 パリから日帰りで訪ねることができるロマネスクの教会堂もあるので、ミュージアムも充実しているパリで宿泊しつつ、日々ショート・トリップを繰り返すことでロマネスクの旅を計画することもできます。しかし大半の方は地方の街に腰を下ろして方々周ることを選ぶことでしょう。
 パリの空港で入国し、すぐに地方都市に移動したい場合、ニースやトゥールーズ、コルシカ島等を目指すならば、空路での移動がよいでしょう。「ある程度距離」が離れた「大」都市であれば、概してシャルル・ド・ゴール空港、オルリー空港共に発着便があります。ちなみにマルセイユの場合、パリとを結ぶ航空路線は数多く運航していますが、空港での手間や待ち時間を嫌って鉄道を選ぶフランス人も多い印象を受けます。
 気を付けなければならないのは、パリとフランスの地方空港とを結ぶ便は、必ずしもシャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港の両空港に乗り入れているわけではないということです。つまり、例えばシャルル・ド・ゴール空港で入国したけれども、地方に向かう便はオルリー空港から出発、ということになると、重い荷物を携えて鉄道やメトロ、バスを乗り継いで、パリを縦断しなければなりません。かつてはシャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港をダイレクトに結ぶリムジンバスが運行されていたので、2つの空港間の移動はスムーズでしたが、2025年現在、このリムジンバスの運行は停止されています(再開の予定は未定)。パリで入国し、地方への国内線を乗り継ごうと考えている方は、必ず両便の利用空港を確認して下さい。

 勿論パリの2つの空港間の移動が苦でなければ、それを選択するのもよいと思います。但しフライトのみならず公共交通機関にも遅延が生じる可能性があるので、パリ到着便の時間によっては、飛行機を乗継ぐためにパリで一泊することも視野に入れる方がよいかもしれません。少なくとも乗継には充分な時間を確保しましょう。
 尚、2021年頃よりフランス政府の方針として、原則鉄道で2時間30分以内で移動できる国内の近距離の都市への航空便は廃止されることになり、以前に比べ空路で移動可能な区間は減りました。

 残念ながらパリで同一空港でフライトを乗継ぐことができない場合、パリの空港から地方都市へは鉄道や長距離バスで移動するか、或いは直接地方空港にてフランスに入国するという方法もあります。
 日本からのフランスへの直行便は2025年現在パリ着便しかありませんが、例えばフランクフルトやロンドンで乗換えてリヨンやマルセイユにてフランスに入国する、マドリードやバルセロナで乗換えてトゥールーズやモンペリエにてフランスに入国する、などとという方法を選択しても、直行便でパリで入国し国内線に乗り換える場合と比べ、飛行機の搭乗回数に変わりはありません。フランスへの入国はパリの空港でということをセオリーに思われている方が多いかもしれませんが、目的地によっては地方空港に入国する方が効率のよい旅ができる場合も往々にしてあります。贔屓の航空会社があるのならば話は別ですが、日本からのフライトについては基本的に複数の航空会社の状況を調べてみることをおすすめします。時間に限りがある旅であればある程、旅の全体像をイメージしてからフランスへの入国方法・フライトを決めるとよいかもしれません。



 B. パリの空港から陸路での地方都市への移動
 パリの空港からすぐに地方都市に移動する際、車窓からの風景を目当てに陸路を選ぶ方は勿論いらっしゃるでしょうし、適当なフライトがないためやむを得ず陸路で、という方もいらっしゃるでしょう。
 パリの空港から地方都市に陸路で移動する手段としては、鉄道と長距離バスに大別できます。
 鉄道の場合、TGVを利用する方が多いと思いますが、シャルル・ド・ゴール空港の場合、わざわざ空港からパリ市内に移動しなくてもTGV駅が直結しており、ここから地方都市に直行できる場合があります。パリ市内の主要駅からの発着便数に比べれば乗り入れ数は少ないですが、このTGV駅から乗車できるとかなり楽です。ですので、まずはTGV駅から目的地へのタイム・テーブルを調べてみて、適当な便がない場合にパリ市内のパリ・リヨン駅やモンパルナス駅といったTGVのターミナルとなっている主要駅からの乗車を考えるとよいと思います。尚、普通列車TERや特急アンテルシテ Intercité を利用する場合には、パリ市内に移動する必要があります。
 他方、オルリー空港にはTGV駅はありません。最寄りの駅は Massy-Palaiseau ですが、全ての路線がこの駅に停まるわけではないので、路線によってはパリ市内に移動する必要があります。
 長距離バスについてはシャルル・ド・ゴール空港とオルリー空港両方に乗り入れているので、目的地への運行スケジュールがあえば便利ですが、やはり便数は少ないようです。長距離バスについても、まずは空港発着便を調べ、適当な便がない場合にパリ市内からの乗車を探すとよいと思います。






 3. フランス国内の長距離移動     A. 地方都市間の移動:空路と陸路

 地方都市間を移動するにあたっても、飛行機でと考える方は多くいらっしゃるでしょう。しかしパリと地方都市とを結ぶ空の便程には、地方都市間を結ぶ便は充実しておらず、強引に空路で移動しようとすると、鉄道利用の場合と同様、パリを経由しなければならない場合が多く生じます。また市街地と空港との行き来や搭乗手続きにはやはり時間と手間がかかるため、結果として陸路を選んだ場合と所要時間はあまり変わらなかった、というケースもよくあります。大都市間の余程の大移動でない限りは、地方都市間は陸路で移動することをまず考える方がよいでしょう。

 陸路での地方都市間の移動も、鉄道と長距離バスに大別されます。長距離バスについては後にスペースをさいて紹介するので、ここでは簡単に鉄道での移動についてまとめます。


 B. 鉄道による地方都市間の移動
 鉄道による都市間の移動方法としてまず挙げられるのが、高速鉄道のTGV、TGVが通っていない地域については、在来線の特急アンテルシテを利用することになります。普通列車のTERも可能で、料金は安いですが時間はかかります。
 街によっては、市街地の在来線の駅とは別に、市街地から離れたところにTGV専用駅が設けられている場合があります。在来線の駅とTGV専用駅とは必ずしもTERやバスでの接続が考慮されているわけではないので、在来線とTGVを乗り継ぐ場合には注意が必要です。また昨今TGVに乗車するにあたって、ホームに入る際にもチケット・コントロールが実施されている駅もあります。TGV利用の際は、時間に余裕をもって駅に向かいましょう。

 ちなみにフランス人は車内での検札が済むと、空いている席に勝手に移動する人が多いので、車内に乗り込み自分の席を見つけてもその席で誰かがくつろいでいたりすることがよくあります。そのような時は声を掛けて退いて貰いましょう。遠慮して自分も空いている席に座ったりすると、車内での検札の際に自分が厄介な目に遭うことになります。


 i. 鉄道のチケットの購入方法

 まず昔から馴染みの方法として、駅構内のチケット窓口又は自動券売機で購入という方法が挙げられます。一昔前は、駅のチケット販売窓口前に長蛇の列が幾つも出来て、というのがお約束の光景でしたが、現在は窓口の数そのものが減りました。窓口ではクレジットカード又は現金で支払うことができますが、自動券売機はクレジットカードのみ対応という機械が大半です。尚、現在乗車前にチケットに刻印するコンポスタージュの義務はなくなりました。
 そして勿論、SNCFのインターネット・サイトやアプリ SNCF Connect でも購入できます。TGVやアンテルシテのみならず、TER、AutocarというSNCFによるバスでの振替輸送の場合も可能です。インターネット・サイトやアプリでチケットを購入した場合、検札時にはスマートフォンで画面を掲示すればよいのですが、Wi-Fi接続が不安定な状況でも確実に対応できるよう、eチケットはダウンロードして保存しておきましょう。

 SNCFのアプリには列車の遅延情報等がタイムリーに確認できる等便利な機能が備わっているのでので、インストールすることをおすすめします。また、工事等の理由でこの期間は〇〇駅は閉鎖されます、△△の路線は減便されます、といった情報も利用する駅を登録しておけば一週間位前から通知してくれるので、現地でフレキシブルに動くことを考えている方には大いに役立つことと思います。
 TGVやアンテルシテは、一部の便を除き早期購入割引があるので、スケジュールが決まったら早目に購入することをおすすめします。チケット購入時に数ユーロ追加料金を支払うと、後日変更が無料でできます。春のイースター、夏のバカンス・シーズン、クリスマス前の便については、料金は高騰し、速いスピードでチケットがソールド・アウトになる便も続出します。これらの時期に旅行を予定している方は、特に早目に予約を済ませましょう。
 TGVとアンテルシテは完全指定席制です。席はチケット購入時に指定します。また、両者は途中下車は不可です(途中下車したら、残りの行程は別途チケットを購入する必要)。
 TERもAutocarも、事前にチケットを購入できます。両者は原則として、チケット記載の乗車日当日であれば終日どのTER・Autocar便にも乗車することができます。例えば9時発の便に乗ろうとチケットを事前に購入したけれど、何らかの理由で乗れず11時発の便に乗る、ということも同じチケットで可能です。
 またTERとAutocarは同一路線であれば途中下車も可能です。例えばディジョン9時発の便のマコン迄のTERのチケットを購入し、トゥルニュで途中下車して夕刻トゥルニュからマコン迄TERで移動する、ということも同一のチケットで可能です。
 尚Autocarに限っては、乗車時にドライバーから購入することも一般的です。また地方ではひとつの区間の運行をTERでもAutocarでも行っている場合がありますが、チケットは同額なので、例えばTERと明記されているチケットを持っている場合、同一区間であればAutocarの便も利用することができます(逆もまた可能)。


 気を付けたいこととして、時折格安料金のチケットが販売され、購入時の画面やチケットに「このチケットは当該の便のみ有効です」と但し書があるものがあります。この格安のチケットでは当然他の便で利用することも途中下車も不可となります。当日乗車直前に購入する場合にはお得ですが、事前に購入する場合には不測の事態に備え、避ける方が無難です。


 ii. 乗車当日チケットをどうしても購入できない場合
 移動の当日、TERに乗車する直前にチケットを購入しようと駅に向かうと、地方の小さな駅では曜日・時間によっては窓口が無人であったり、自動券売機も故障、Wi-Fiも不安定で、どうしてもチケットを購入できない事態に陥ることがあります。このような時は、一日の便数も少ないでしょうから、とりあえず列車に乗車して、検札の車掌さんがまわってきたらこういう事情でチケットを買えなかった、ということを自らきちんと説明しましょう。そうすれば車掌さんがその場で定額でチケットを売ってくれます。
 恐らく、正当な理由があってチケットを買えなかったことを自ら申告して、チケットを購入する姿勢をみせることがポイントだと思います。SNCFは乗車前にチケットを購入するべきものであり、車内でのチケットの販売は原則行っていないので、チケットがないまま検札の車掌さんの前でモゾモゾとしていると、無賃乗車を狙ったと見做され罰金を科される可能性があります(罰金の金額は距離数に応じる)。私自身何度かこのような事態を経験したことがありますが、無事事なきを得ているので、落ち着いて誠意ある態度で臨みましょう。


 iii. 鉄道の車内、駅構内のトイレ事情
 鉄道利用時のトイレですが、一昔前に比べてだいぶ車内のトイレはきれいになりました。概して私達日本人も、以前程不快感を覚えることは少ないと思います。
 高速郊外鉄道RERやトランシリアン Transilien (イル・ド・フランス地域鉄道)の場合には、車内にトイレがある場合とない場合とがあります。TERにはトイレがありますが鍵がかかっていることも多く、その場合には車掌さんに開けて貰いましょう。ちなみにTGVやアンテルシテはトイレ完全完備、メトロは車内にトイレはありません。

 駅構内のトイレについては、都市部では常時解放されていますが、それ以外の地域では、鉄道の到着・出発がある時間の前後数十分の間のみ開放、ということもあります。更に小さな駅になると、トイレの個室の扉に挿入口があり、そこにチケットをクレジットカードのようにスライドさせて鍵を開けて利用するタイプのものがあったり、駅の窓口や構内のカフェ等に行って、鍵を開けて貰う或いは鍵を受け取り自分で開ける必要がある場合もあります。車内のトイレと同様、駅構内のトイレも以前に比べ、だいぶ衛生的になっていると思います。
 大きな駅ではチップ制です。定額(駅により異なる)で、入り口付近に係員がいる場合には、コインがなくてもお釣りを出してくれますが、あまりに額の大きい紙幣は嫌われるかもしれません。







 C. 長距離バスについて     i. 長距離バスの魅力・利点
 私達外国人観光客にとって、鉄道に比べてまだまだ長距離バスの利用は定着していないのではないでしょうか。その第一の魅力はなんといっても料金です。しかし、利点はそれだけには留まりません。
 フランス国内で長距離移動する場合の難点は、地方にもよりますが、概して横方向への移動です。地図上あまり離れていないと思われる地方都市間でも、鉄道で移動しようとすると、TERのみの運行だったり、便数が極端に少なかったり、直通便がなく乗換えに数時間もかかったり、パリに一度戻ることになって理不尽な思いをしたりと、あまり勝手が良いとは言えません。このような場合、長距離バスが大きな力を発揮します。
 ちなみに、鉄道でも直通便が多くある都市間を結ぶ路線については、概して鉄道よりバスの方が長旅になるケースが多いです。また長距離バスは夜遅い時間帯の運行しかない場合もありますので、必ずタイムテーブルを調べてから決めましょう。

 恐らく多くの日本人の想像よりも、車内は清潔で整っていて、雰囲気の悪さを感じることもないと思います。車内ではトイレ完備(かなり狭く、乗客率が高い場合には、女性が利用するのは躊躇われるかもしれません)、Wi-Fi完備と、鉄道利用の場合と勝手は変わりません。利用者層は様々ですが、小さな子供を連れたファミリー、あまりに高齢な方は見かけません。 


 参考までに、これは私の経験談ですが、かつてクレルモン・フェランからトゥールーズに強引に移動を試みたことがありました。その時まず鉄道での移動を調べてみると、TERのみで、ブリーヴ・ラ・ガイヤルド乗換え、所要時間は計8時間(うち乗換え待ち時間2時間)、チケット代約90ユーロ(料金は利用日・時間帯・割引適用の有無等により異なります)でした。一方長距離バスでの移動を調べてみると、同じくブリーヴ・ラ・ガイヤルドで乗換え、所要時間7時間(うち乗換え待ち時間1時間)、チケット代はなんと約10ユーロ(鉄道の場合と同じく、料金は利用日・時間帯・割引適用の有無等により異なります)でした。
 当然バスを選びましたが、実際に利用したところ、乗換え時も鉄道利用時のようにホーム間を地上に地下にと重い荷物を引きずって移動する労力は不要、しかも大型バスに対し終始乗客は10人程度であったためゆったりと静かに過ごすことができ、全くもってバスを選んで正解でした。ちなみ諸条件により状況は異なるということは、ご了承下さい。

 個人的な印象ですが、鉄道の場合、かなりの高確率で何らかの事由による遅延に見舞われますが、長距離バスは鉄道よりも遅延は少ないと感じます。予定より早く到着するケースもあります。またスペインやイタリア等と国境を跨ぐ路線の場合、途中で国境警備隊や税関職員によるパスポート・コントロールがある場合があります。冷静に対応しましょう。


 ii. 長距離バス利用にあたって諸々



 断片的になってしまいますが、長距離バス利用にあたり、ポイントとなりそうなことを記します。
荷物:TGVやアンテルシテを利用する場合、荷物置き場が狭くてスーツケースを置く場所に困ることが往々にしてあります。長距離バスの場合は、大型荷物は総じて座席の下の専用スペースに詰め込まれます。乗客が自ら自由に荷物を出し入れすることができる場合もあれば、ドライバーが荷物の出し入れの際にチケットと荷物に貼ったラベルとを照合してコントロールする場合もあります。

車内での飲食・喫煙の禁止:車内で飲食して注意を受けている場面に遭遇したことはありませんが、要はゴミの後始末の問題かと思います。

途中休憩:走行距離が長い場合には、パーキング・エリアやショッピング・モール等で休憩を設けてくれるので、そこで食事や買い物をすることができます。特に女性はここでトイレを利用するとよいでしょう。出発の際にはドライバーが周囲の人達に「○○行き出発します」と声をかけ、乗客数を必ずチェックします。
フランスで運行している主な長距離バス会社

・BlaBlaCar Bus
・Flixbus
・ALSA
・Eurolines

 チケット売り場や案内所で尋ねれば、該当路線に休憩があるか否かは教えてくれます。しかし、いつ、どのくらいの時間の休憩をとるのかということは、その便の運行状況に左右されます。休憩ポイントに着くと、ドライバーが「ここで休憩にします、何時何分迄に車内に戻って下さい」とアナウンスします。概してドライバーは英語を解すので、フランス語がわからない方は個別に確認しましょう。とにかく他の方の迷惑にならないよう、時間は厳守したいものです。

乗継:長距離バス間での乗継であれば、バスは全て同一のバス・ターミナルに出入りしているため(パリを除く)、乗り場探しに苦労することはまずないでしょう。
 バス停間の移動については、鉄道の場合と比べてかなり楽です。鉄道駅の場合、エレベーターやエスカレーターが整備されているとは限らないホーム間を、地上に地下にと重い荷物を運ぶ必要があります。長距離バスの場合には概して単純に横方向にスライド移動するだけです。

降車:バスの停車場には、鉄道駅のように停車場名が明示されていることは少ないです。しかし路線の途中で降車する場合も心配はなく、停車場に近づくとドライバーがアナウンスしてくれますし、車内の電光掲示板等に「次は○○に停車」といったような表示が出ます。それでも不安でしたら、ドライバーに目的地に着いたら声をかけて貰えるよう、前以ってお願いしておきましょう。



 iii. 長距離バスのチケットの購入方法
 チケットは各バス会社のインターネット・サイトやアプリで、又は(長距離)バス・ターミナル Gare Routière に併設されているチケット売り場(稀に実際の乗り場とは離れたところにある場合もあり)で購入します。市内バス等のように、当日車内でドライバーから購入することはできません。人気の便・路線(例えばパリーリヨン間等)の場合には早い時点で満席となることがあるため、可能な限り速やかに購入することをおすすめします。また、長距離バスもTGV等と同様、一部の便を除いてチケットの早期購入割引があるので、予定が決まったら早目に購入しましょう。尚チケットの検札は、ドライバーによって乗車時に行われます。

 SNCF利用の場合と同様、インターネット・サイトやアプリでチケットを購入した場合、検札時はチケットをスマートフォン等で掲示すればよいのですが、購入したチケットをダウンロードして保存しておくことをおすすめします。Wi-Fi環境が不安定な時にも安心です。
 また、バス会社のアプリをインストールしておくと便利です。チケットの購入のみならず、会社によって多少の差異はありますが、遅延情報等をタイムリーに確認できます。


 iv. 座席について
 座席については、バス会社や路線により、チケット購入時に一切指定できない場合と、購入時に自動的に席が割り振られる場合、自ら指定する場合とがあります。
 チケット購入時に席を指定できない場合は、当日乗車の際にドライバーが乗車順に席を割り振っていきます。全行程において乗車率が低い場合には席の割り振りがないこともあるので、その場合には好きな席に就きましょう。チケット購入時に席の指定を求められる場合、席によって料金が異なる場合があります。

 ちなみに一座席あたりのスペースは、残念ながら鉄道に比べて狭いです。勿論、乗客が少なければくつろぐことができます。一方人気路線の長時間の移動は、やはり概して外国の方は私達より身体が大きい方が多いですから、しんどいというのが率直な感想です。


 D. 市内バス・中距離バスの場合

 トピックから外れますが、市内バスや中距離バス(隣り合った複数のコミュニティを結ぶ近郊バス)の利用について簡単に説明します。
 市内バスや中距離バスを利用する場合、チケットはバス車内でドライバーより購入するのが一般的で(支払いは現金でもカードでも可)、基本的に一回の乗車につきいくらと決まっている定額制です。現金で購入する場合、高額紙幣は嫌われる傾向にあるため、コイン又は小額紙幣を用意しておきましょう。バス・ターミナル、街中のバス会社のデスクでも購入できますが、概して回数券や定期券のようなパスに限られます。
 頻繁にバスを利用するのであれば、バス会社のアプリをインストールして活用しましょう。アプリからチケットを購入できる(乗車時にスマートフォンで当該画面を掲示するのみ)ほか、遅延情報等もタイムリーに知らせてくれますし、バスの路線図や乗継の確認も容易です。また、回数券やパス類(一日パス、一週間パス等様々)を積極的に利用しましょう。乗車の度に購入する手間が省けますし、一回の乗車券に対し、回数券やパスは驚く程割安になる場合が多いです。
 バス停には大きな文字で停留所名が描かれているとは限りません。路線の途中で下車する場合には、車内のアナウンスや電光掲示板等の表示に注意を払いましょう。バス停が近づいたら座席周りにある呼び鈴・ブザーを鳴らして、次のバス停で降りることをドライバーに知らせます。降りそびれてしまうことに不安がある場合には、目的地に着いたら教えてくれるよう、乗車の際にドライバーにお願いしておきましょう。





 4. どの教会堂へ、いつ行くか     A. 教会堂へ

 大きな街の教会堂や観光名所として名高い教会堂であれば、いつ訪れようとも大凡365日、陽がある間は扉は開かれていることでしょう。概して9時から17時頃迄、夏季は更に開放時間は朝夕共に長くなることが多いです。
 しかし小さなコミュニティにある教会堂の場合には、事情は異なります。週あたりの開放日がごく限られていたり、Pâques(パック=イースター)からToussaint(トゥサン=諸聖人の日)の間のみ、夏のバカンス・シーズンだけ、午前或いは午後のみ開放、などということもあります。また、クリスマスと大晦日・元日には観光客はお断り、という教会堂もあり、更にはクリスマス直前から1月上旬にかけての期間、特別なミサが行われない日があっても、まとめて数日間、数週間という間観光客には扉を閉ざしてしまう教会堂もあります。
 現地に着いてから慌てふためく、がっかりする、という事態を避けるために大切なことは、旅のスケジュールを組む際に、目的の教会堂の開放日・時間もしっかりチェックしておくことです。教会堂の開放日・時間については、その教会堂のサイトやオフィス・ド・トゥーリズム、コミュニティのサイト等で確認することができます。
 教会堂自体は開放されていても、例えばクリプト等特別な場所は、オフィス・ド・トゥーリズム等で予約をしなければならない、スタッフに鍵を開けて貰う、或いは鍵を借りる(この場合はパスポート等のIDを掲示する)必要があるなどということもあります。この場合には、オフィス・ド・トゥーリズム等のデスクのオープン時間にも、私達の教会堂の訪問時間は左右されることになります。
 予約が必要な場合、何名以上のグループのみ受け付け、というケースもあります。一人旅の場合には厄介ですが、受付担当が良心的な方だと、他の団体の予約時に一緒に入ることができるように取り計らってくれることもあります。初めから諦めず、まずは問い合わせてみましょう。


 B. ミュージアムへ

 ミュージアムについては、大半の施設が月曜又は火曜(あるいは両日)を休館日とし、祝日も休館とするところもあります。多くの施設ではチケットを購入すれば当日に限り出入り自由です。また、毎月1日は入館料無料です(稀にバカンス・シーズンは対象外という施設もあります)。
 地方に行くと、夏のバカンス・シーズンは終日開館していても、オフ・シーズンとなると商店さながら昼に1-3時間程クローズするミュージアムもありますし、クリスマスから正月の間は、祝日のみならずまとめて一定期間クローズというところもあります。夏のみオープンという施設もあります。開館日・開館時間は事前に必ず確認しておきましょう。
 また、どうしても観たい作品がある場合には、ミュージアムのサイト等でその作品についてもチェックしておいた方が無難です。わざわざ出向いたにも拘わらず、修復作業中であったり、巡回展で他所のミュージアムに貸し出されていたりなどといった理由で観ることができないことほど残念なことはありません。

 尚、ミュージアムでの展示作品は基本的にフラッシュを使用しなければ写真撮影は可能ですが、稀に禁止しているところもあります。場内で標識や断り書き等が見当たらない場合には、スタッフの姿を見かけたら声を掛けておく方が無難です。


 C. ヨーロッパ文化遺産の日 Journées du  Patrimoine
 毎年9月の第3の週末は、ヨーロッパ文化遺産の日 Journées européennes du patrimoine です。これはフランスのみならず、EU加盟国で展開されるイベントで、建築・美術・歴史愛好家には嬉しいことに、このイベント時のみ一般公開される歴史的建造物等が各地に数多くあります(ちなみに2024年には、フランスでは17000を超える施設が開放されたそうです)。またミュージアムを含め、入場料が割引になったり無料になるところもあることに加え、このイベントのタイミングに合わせ、現地でワークショップ、特別セミナーや特別ツアーが数多く開催されたりもします。
 このタイミングに旅することができるなら、幸いこの上ありません。これまで内部公開されていなかったあの教会堂も、修復・修繕が済んで今年・来年にはこのタイミングに開放されるかもしれません、普段は内部の写真撮影が禁止されている建物も、特別に許可されるかもしれません。以前よりどうしても気になる・諦めきれない建物があるという方は、毎年チェックしてみるのもよいかもしれません。

  JOURNEESEUROPEENNES DUPATRIMOINE :  https://journeesdupatrimoine.culturecommunication.gouv.fr/


 D.アクセス方法の検討
 目指す教会堂等が決まったら、次に考えるのは、宿泊先又は最寄りの駅やバス停からその教会堂迄のアクセス方法です。その教会堂が建つコミュニティまで公共交通機関でアクセスできるのか、地図を眺めるだけではなかなかわかりづらいことですし、大量の各種路線図を照らし合わせるのも煩雑です。そこで下記に挙げるサイト(アプリもあり)で、まずはアクセス方法を検索してみてはいかがでしょうか。
  Rome2rio https://www.rome2rio.com (フランス周辺各国もカバーされています)
 出発地と到着地(比較的有名な場所であれば、建物名等でも検索可)を入力すれば、飛行機、鉄道、バス、タクシー、自動車等、様々な交通手段によるアクセス方法を提案してくれます。運行状況(時間・日・週に何便等)、所要時間、距離、料金等も掲示されるので、目的地迄のアクセス方法を比較・検討する力強い味方になってくれると思います。バスについては会社名や路線番号等も、タクシーの場合には出発地から利用可能なタクシー会社名とその連絡先も表示されます。一度検索してみてこれといった移動手段が見つからない場合には、時間帯や日にち等の条件を変えて再度検索してみましょう。
 目ぼしいアクセス方法を見つけたら、先の検索結果で得た情報をもとに、SNCFや各種バス会社等の個別のサイトでより詳細な運行状況を確認しましょう。実際の時刻表を確認することで、週あたり数便しか鉄道・バスの運行がない場合には、「○○へ行くには何曜日」といった具合に予定をたてることができるでしょう。また「○○と□□に行くためには、どの街を拠点とすれば最も効率的か」といったことを探るにあたっても、このサイトを利用することができますね。


 ちなみに、このサイトの検索結果には、必ずしも常に全ての選択肢が表示されるわけではないようです。なかなかこれといった手段が見つからない場合には、Google Maps等で公共交通機関による移動についてチェックしたり、各コミュニティのサイトで運行されているバス会社・路線等について調べることで、アクセス方法を発見できることもあります。





 5.滞在する
 A. どの街に滞在するか:.「ホーム」とする街を決める
 限られた時間の中、重い荷物を持って街から街へと頻繁に移動して宿を変えることは、時間と体力のロスにしか過ぎません。訪ねたい教会堂をリスト・アップしたら、拠点とする街を決めてそこに宿を確保し、その街から今日はこの街へ、明日はあの街へ、と往来を繰り返すようにして方々に足をのばすとよいでしょう。
 私の場合、一日で訪れることが可能な街としては、片道2時間程度を目安とします。2時間30分でもかなり厳しいですが、片道3時間となると、移動に体力を削がれて肝心の目的地で集中力を欠いてしまい、一日の終わりには、まるで移動がその日の目的だったかのような感が拭えないためです。

 滞在する街を決めるにあたって気を付けたいことは、地図を眺めて一見近く思われる2つの街があるとして、その間の実際の移動には鉄道やバスの便数が極端に少ない、または、地図上直線的には近くても、蛇行するようなルートでしか鉄道やバスは通っておらず、結果想像以上に移動に時間を要してしまうということがあるという点です。
 また、鉄道は遅延がよくあります。SNCFは利用客が多い場合には遅延した便に併せて乗り継ぎ便の発車時間を調整してくれますが、必ずしも自分の利用している便がそれに該当するとは限らず、また道程が長い程途中で乗り継ぎができなくなる確率が高くなります。小さな街の駅では一日の発着便が1〜数本、更には週に数本に限られる場合もあれば、この日のこの路線は上りだけ、などということもあります。そうなると途中の街で一晩足止め、ということになりかねません。その場合、足止めされた街の駅周辺で急遽宿を探したり、宿泊先迄のタクシー等の別手段を探すことになります。そして小さな街ではタクシー会社(個人を含む)の数も限られ、距離が長ければ料金はかさみますし、方面によっては断られるケースも考えられます。

 従って、訪ねる街をリスト・アップしたら地図を眺めて中心は大凡この辺り、と短絡的に決めず、鉄道やバスの運行状況も調べて、拠点=ホーム或いはハブとする街を精査することが旅の効率アップに繋がります。また「ホーム」とする街を決める判断基準として、交通の他に、ある程度規模の大きな街を選ぶことをおすすめします。単純に宿泊先の選択の幅は広がりますし、レストランやスーパー、商店、更にはコインランドリー等の種類や数も多く、より開店時間が長い店の数も多いことでしょう。些細なことに感じるかもしれませんが、旅の時間が長い程、基本的生活、身の回りに関する事柄は重要になります。

 以下参考までに、このサイドで紹介している教会堂やミュージアムを巡る旅のホームとするに最適と個人的に考える街を挙げます。
  ・ブルゴーニュ : ディジョン
  ・ポワトゥ・シャラント : ポワティエ
  ・ミディ・ピレネー : トゥールーズ
  ・ピレネー・オリアンタル : ペルピニャン
  ・オーヴェルニュ : クレルモン・フェラン

 私が提案する拠点とするに適した街は、「ロマネスク探訪の旅のモデル Modèles du voyage」のページにまとめています。なかなか拠点とすべき街の見当がつかない、複数の候補地で決め兼ねている、折角フランスまで行くのだから可能な限り教会堂をまわりたい、そんな方はどうぞご一読下さい。何かヒントが見つかるかもしれません。


 B. 宿泊先を予約する

 宿泊先はできる限り予約しましょう。総合宿泊予約サイトを通じて簡単に手続きできます。「関連・参考リンクLiens」のページに、大手宿泊予約サイトのリンクを載せているので、ご活用下さい。予定が流動的という方も出来る限り予約することをおすすめします。サイト運営先やそこに掲載されている宿泊先のプランにもよりますが、何日前迄ならキャンセル無料というプランが数多くあるので、心配は無用です。
 総合宿泊予約サイトについて、運営会社によって得意とする地域とそうでない地域があるように感じます。パリのみならず、地方の中規模の街についても全般に最も情報が充実しているのは、個人的印象として Booking.com かなと思います。余裕がある方は複数サイトで検索して比較してみましょう。

 フランスの地方では、中規模の街であっても、バカンス・シーズン以外はクローズしてしまうホテルが多くあるため、バカンス・シーズンではないから宿はとり易いだろうと考えるのは、必ずしも正しい認識ではありません。またバカンス・シーズンであっても、当然ながら条件の良いホテル・プランはすぐにソールド・アウトになってしまいます。ある程度旅の予定が立ったら、早目に宿泊先のリスト・アップを始めましょう。複数のホテルで迷っているなら、両方予約を入れて、期日迄に不要なプランをキャンセルすればよいだけのことです。お金も時間も労力も要する旅なのですから、そのくらいしたたかさがあってもよいと私は思います。


 C. フランスのホテル事情・ホテルの種類
 一口にホテルといっても、シャトーを改築したものからドミトリー・タイプのユース・ホステルまで、その種類は様々です。大前提として、フランスのホテル事情は基本的によいとは言い難いということは覚えておいて下さい。都市部であれば、数は十二分にあると思うので、余程の国際的に注目を集めるイベント等がない限り、宿泊施設を見つけることに困ることはないと思いますが、星の数への期待値によくない意味で実態は伴わないことの方が多いように感じます。そしてこれは都市部に行くにつれて顕著です。あくまで個人的意見ですが、異論を唱える方は少ないのではないでしょうか。一晩であれば我慢も妥協もするでしょう。しかし滞在期間が長くなるのであれば、宿泊場所にもこだわりたいものです。自分にあった宿泊先を選びましょう。

 ちなみにシャトーを改築したホテルと聞くと、豪華宿泊施設をイメージされるかもしれませんが、シャワーやトイレ、簡易キッチンは共同、という施設も稀にあります。料金で気づくと思いますが、念のため「シャトー」の文字に惑わされず内容を確認しましょう。
 また、ユース・ホステルを否定しているものではありません。確かに街の中心部から離れたところにあるのが常ですが、利用客は若年層のみではありませんし、個室がある施設、食事に定評がある施設もあり、なんといっても容易く旅人同士交流をはかれる点が魅力です。但し、所持品の管理等には注意しましょう。



 i. ホテルを選ぶ基準

 ホテルを選ぶにあたって、まずは予算がありきだと思いますが、同時に考慮すべきは、鉄道駅であったりバス・ターミナルであったり、その街の交通のハブとの距離です。例えば鉄道駅やバス・ターミナルが街の中心部から外れたところにある場合には、快適な(或いは不快でない)ホテルは駅やバス・ターミナルから公共交通機関を利用しなければならないような街中心部にあって、駅やバス・ターミナル周辺には実に簡素なホテルしかないという場合が往々にしてあります。
 これは私自身年齢を重ねるに連れて感じることですが、旅のメインの目的は教会堂巡りであるとしても、宿はやはり重要です。念願の教会堂を訪れてどれ程素晴らしい体験をしても、宿で些細なことであっても不快なことがあると、訪問先で受けた感動も簡単に半減してしまうものです。
 その一方で、例えば一週間の滞在の間毎日鉄道やバスを利用して1−2時間離れた街へのショート・トリップを繰り返す場合、宿が駅やバス・ターミナルから離れているため、毎日宿と駅或いはバス・ターミナルとの行き来のためだけにも更に市内バスやタクシー等に乗らなければならないとしたら、これも実に煩わしいものです。
 勿論状況は街によって異なりますし、またあなたが何を最重要視するか、旅の経験値、体力、メンタルの強靭さ等々、諸々の要素によっても着地点は変わるでしょう。しかし少なくとも、ひとつのことを優先するあまりにその他の事柄についてははじめからあまりに過酷なことを己に課すという極端な選択は避けた方がよいでしょう。


 ii. 建物の設備を確認する
 多くの方は部屋の設備・備品の確認はするでしょう。例えばバスタブの有無、ドライヤーやアイロン等の有無、後者のような備品は、ホテルにオーダーすれば用意してくれるところもあります。
 忘れてならないのは、建物内のエレベーターの有無の確認です。フランスには古い建物が部屋の内装だけに手を加えてホテルとして利用されているところがまだまだ多く残るので、意外とエレベーターが備わっていない施設が多く残っています。かつてエレベーターがない5階建てのホテルもありました(それでも駅前なので結構な料金設定でした)。重たいスーツケースを運んでいない時であっても、疲れた身体に毎回これではさすがにしんどいです。是非事前に確認することをおすすめします。更には、特に地方ではトイレやシャワーが共同という古いタイプのホテルも多く残ります。併せて滞在型ホテル(下記参照)の場合には、ランドリーの設備の確認も怠らないで下さい。その他、車や自転車を数日にわたってレンタルする方は、ガレージ等駐車可能なスペースの有無も忘れずに確認しましょう。

 蛇足ですが、地方でよく見かける、ブラッスリーやレストランの上階が宿として提供されている場合、施設として宿泊客用の食堂はないけれど、階下のブラッスリーやレストランで朝食をとれることもあります。ちなみにこのタイプのホテルは、周囲に飲食店が少ない場合、夜遅い時間に戻ることが多い時等に非常に勝手がよいです。



 iii. 一般ホテルと滞在型ホテル・レジデンス

 ホテルと一口に言っても、ベッドとシャワー・トイレが備わる(シャワーとトイレが共同の場合も含む)クラシックな一般的なホテルと、更に簡易キッチン・システムが備わった滞在型ホテル(又はアパルトマン・タイプのホテル)に大別できます。
 後者は厳密には、個室に簡易キッチン・システムが備わった滞在型ホテルと、一般のレジデンス(寮)の一室を旅行者に貸出している施設とがあります(ちなみにホテル名に「レジデンス」という名を冠している一般的なホテルもあるので、名前だけでは区別できません)。尚レジデンスについても、大手総合宿泊サイトにプランが掲載されます。
 滞在型ホテルについては、以前は長期出張のビジネス・パーソンや、新居が決まる迄の一時的な住居として利用する人等の利用が多かった印象がありますが、最近は短期旅行者も多く利用しています。レジデンスについては、基本的には単身の社会人や学生用の所が多いですが、カップル・ファミリー向けの施設もあります。
 いずれも中・長期滞在を検討されている方には非常におすすめです。滞在型ホテルとレジデンスの違いについて挙げると、滞在型ホテルには食堂での朝食のサービスがある(別料金)、レジデンスのレセプションの開放時間は比較的短い、レジデンスでは長期滞在しても無料清掃サービスがない施設が多い、等が思いつくところで、大筋はほぼ変わりません。レジデンスは一般市民の方々も同階や同棟にいて、中にはいろいろ世話を焼いてくれる気のいい方もいたりなどして、彼らとの交流も旅の楽しい思い出になったりもします。
 簡易キッチンの設備には幅がありますが、少なくともIH調理器、電子レンジ、フライパン等の調理器具、食器・コップ類、洗剤・スポンジ等は揃っています。空いた時間に近くのスーパー等で買い置きしておけば、早朝に出発する、或いは夜遅い時間に戻るけれど周囲の店は開いていない、ホテルの食堂も開いていない、そんな時に本当に助かります。
 簡単な掃除用品(箒とちりとり)もありますが、滞在型ホテルの場合、概して一週間以上の滞在すると週あたり一回無料の掃除のサービスが入ります。
 また滞在型ホテルやレジデンスの場合、概して建物内にランドリー・ルーム(洗濯機と乾燥機)があり、24時間好きな時間に利用できます。但しパリにあるこういったタイプの施設にはランドリー・ルームがないところが多いように感じます。予約時に必ず確認しましょう。ない場合には、付近のコイン・ランドリーの有無をチェックすることをお勧めします。
 ちなみに使用方法はマシーンによるわけですが、スマートフォンで決済を完了できるもの、コインを直接投入するものがあるほか、ホテルのレセプションでジュトン(マシーン専用コイン)を購入してから利用する場合もあります。洗剤は自前で用意するタイプ、既にマシーンにセットされているタイプがあります。
 その他、地方の滞在型ホテルやレジデンスの個室は概して充分な居住空間がありますが、パリについてはベッドのすぐ隣にシンクがあるような非常に限られたスペースしかない施設も多くあります。



 iv. 民泊
 いわゆる民泊、アパルトマンの一室(稀に一軒家も)の宿泊施設としての提供は、フランスでは随分以前より導入されています。民泊についても大手総合宿泊サイトにプランが掲載されていますが、Booking.com に掲載件数が多いように感じます。支払いやキャンセルについても一般ホテルの場合と同じです。入室にあたっては、オーナーが直々に案内してくれる場合もあれば、鍵の指示等も全てメッセージ等でやり取して、最後迄一切オーナーと顔を合わせずに終わることもあります。
 室内の設備は滞在型ホテルやレジデンスとほぼ変わらず、Wi-Fiとキッチン設備はほぼスタンダードで完備、室内に洗濯機があれば、眠っている間に回すこともできます。ガレージを利用できるところもあるので、レンタカーで周遊される方にもおすすめです。但し、無料清掃サービスはありません。
 ちなみに私の場合は、ここ十数年の間は専ら滞在型ホテルやレジデンスを選ぶことが多いです。まず滞在型ホテル又はレジデンスを探し、交通アクセスに問題がある、料金や設備等の条件が合わないといった場合に、民泊で探します。旅先でも自分の普段の生活スタイルを大きく変えることなく自由に過ごすことができる快適さ、それが最大の魅力でしょうか、旅が長くなるほど大切であると痛感します。


 v. ホテル・民泊以外の宿泊スタイル



 ホテルや民泊の他にも多くの宿泊施設のタイプがあり、特別な体験をしたいとお考えの方におすすめです。キャンピング場(いわゆるテント用、キャンピングカー用)も思いのほか様々なところにあります。山中や森の奥深くにある自然に囲まれたコテージ、大きな川沿いの街にはボート(あくまで宿泊施設として)等というものもあります。こういったタイプの宿泊施設も、宿泊予約サイトで検索できます。
 更にはアパルトマンや一軒家内の間貸し(宿主と同居するホーム・ステイのようなスタイル)もあります。この場合、部屋を提供してくれるオーナーが世話好きな方である場合、街のガイドなどをしてくれる方もいらっしゃるようです。 abritel のサイトで多く情報をみかけるので、興味がある方は検索してみて下さい。
 一部の修道院では、観光客向けに滞在プランを企画しているところもあります。興味がある方は各修道院のサイトで確認して下さい。
宿泊プランを提供している修道院の一例
 ・モン・サン・ミシェル修道院 Abbaye du Mont-Saint-Michel
 ・サン・マルタン・デュ・カニグー修道院 AbbayeSaint-Martin duCanigou
 ・ノートル・ダム・ド・シトー修道院 Abbaye Notre-Dame de Cîteaux

詳細については、各修道院のインターネット・サイトにてご確認下さい。






 6. いざ教会堂へ


 街中にあるモニュメントやミュージアムへは、概して気軽に歩いてまわることができます。自転車のシェアリングサービス(下記参照)を利用するのもよいでしょう。メトロやトラム、市内バス等がある大都市では、積極的に利用しましょう。
 街中には大概、観光スポットへの道順を示す標識がありますが、海外旅行者にとってはあまり親切でないことは否めません。手持ちのガイドブックに載っていない街でしたら、オフィス・ド・トゥーリズムでツーリスト向けの街中の地図を入手しましょう。勿論Google Maps等のオンライン地図サービスを使って、そのナビゲーションに従って進むもよし。

 問題となるのは、鉄道駅・バス停から目当てのコミュニティ・教会堂迄数キロ〜離れている場合のアクセス方法です。以下、徒歩、タクシー、自転車と順にみていきます。


 A. 歩く
 自分の足は勿論移動の基本ツールです。目的地迄数キロの場合、タクシーを呼び立てる手間と時間とを天秤にかけ、歩くことをチョイスすることもあるでしょう。散策がてらに、と気軽に歩き出すこともあるかもしれません。巡礼の気分を味わえるかもしれません。
 どのくらいの距離を自分の足で歩くことができるか、それは個人の体力によるわけですが、普段の自分の体力より少し差し引いて考慮した方がよいと思います。連日の疲労が溜まった身体にガイドブックや飲み物、カメラ(いくら軽量化が進んでも)はやはり重いです。更に炎天下だったり、強風だったり、天候によって体力の消耗度は増します。そして道は、幾つかの丘を越え、などと厳しい勾配が続く場合もあります。これは地図ではなかなかチェックしづらい点で、たとえ事前に確認していたとしても、実際は想像を超えていた、ということもしばしばあります。
 また、目的地に辿り着くことができればよいだけではなく、教会堂を見学するにあたっても相当歩きまわるわけで(大きなモニュメント程尚更のことです)、そして当然ですが帰路もあります。帰りはタクシーでと思っても、小さなコミュニティではタクシーを呼ぶことはなかなかままなりません。
 「足に自信がある」という方も、とにかく自分の体力を過信せず、また当日の自分の体調とよく相談して下さい。



 B. タクシーの利用     i. 都市部とそれ以外の地域でのタクシーの利用について



 都市部ではタクシーの利用に困ることはまずありません。駅前等にタクシー乗り場があり、空車が待機していなくても、多少の待ち時間で空車がやって来るでしょう。またフランスにも様々なタクシー配車サービスがあり、専用アプリ、又はインターネットサイトから手配することができます。

 しかし都市部を外れると、例えば駅前のタクシー乗り場などが必ずしも期待できるわけではありません。その場合、駅等にタクシー会社の名前と電話番号が書かれた看板や貼紙等があって、自らコンタクトを取る必要があります。この場合、個人事業者の場合にはオフ・シーズンのため休業中ということもあったり、連絡して迎えに来て貰うことになっても長い時間待たされるケースもあります。更にタクシーの配車サービスを利用しようとしても、サービスの対応エリア圏外ということが往々にしてあります。
フランスの主なタクシー配車サービス(一例)
 ・Taxi G7
 ・Bolt
 ・Uber
 ・LeCab

サービスにより、全国対応、パリに特化等特徴があります。詳しくは各サイト又はアプリにてご確認下さい。

 都市部外にてタクシーを利用して目的の教会堂との間を往復しようと計画していた場合、当日タクシーを思うように手配できないがために見学の時間を大幅に削らなければならなかったり、挙句の果てには訪問を諦めなければならなくなったら、これは非常に残念なことです。小さな街では特に、タクシーは前日までに予約をしておきましょう。予約時に具体的な目的地や料金についても話をしておけば、当日スムーズに動くことができます。帰路もお願いしたいのであれば、予約時にその旨伝えておきましょう。
 タクシー会社(個人事業者も含め)の連絡先はオフィス・ド・トゥーリズム等で教えてくれるでしょうし、オフィス・ド・トゥーリズムのサイトに掲載されている場合もあります。或いはフランス版イエロー・ページ「Pages jaunes」で、自分で探すこともできます。宿をとっているなら、宿泊先で紹介して貰いましょう。先に挙げた「Rome2rio」のサイトやアプリでも、検索結果にタクシー会社の名前と連絡先はリスト・アップされるので、それを利用するのもよいでしょう。
 どうしても事前予約ができるタクシー会社が見つからないという場合は、教会堂に最寄りの駅やバス・ターミナル、バス停からではなく、多少目的地から離れても敢えて街としての規模が大きい街でタクシーを探す・乗るというのも、ひとつの有効手段です。運行しているタクシー会社と車の台数はより多いでしょうから、タクシーの手配はより楽だと思います。



 ii. タクシーで周遊する
 タクシーを半日、一日借り切って、周辺の街・コミュニティを幾つかまわるという方法もあります。複数人での旅であれば割安でしょう。金額は交渉によるでしょうが、目安を知りたい場合には、オフィス・ド・トゥーリズム等で尋ねてみるとよいでしょう。インターネットでも凡その相場を調べることはできます。
 運良く気のよいドライバーと出会えたなら、ちょっとしたガイドもしてくれるかもしれません。パリとは違って、地方のタクシー・ドライバーは地元の方でしょうから、穴場的な観光ポイント、カフェやレストラン等のロコ情報にも詳しいことでしょう。
 その場合には、オフィス・ド・トゥーリズムや宿泊先で紹介して貰ったり、先に挙げたような看板や貼り紙、 Pages jaunes を頼りにあたってみるとよいでしょう。タクシー乗降場があれば、そこで待機しているドライバーと直接交渉してみると話が早いかもしれません。但しこの場合も、できれば前日迄に決めておくことをおすすめします。


 iii. ライドシェアサービスConvoiturage について
 タクシーとは異なりますが、ライドシェア・サービスについて簡単に紹介します。
 フランスでは2010年代後半からライドシェア・サービスが導入され、サービスを提供するドライバーも利用者も増加傾向にあります。現在フランスには、 BlaBlaCar や FranceCovoit、Uber といったライドシェアサービスのプラットフォームやアプリがあります。ライドシェアの利点は料金が安いこと、ドライバーや同乗者達との交流にあると思います。興味がある方はチェックしてみて下さい。

 ちなみに私自身何度もライドシェアの情報を調べたことがあるのですが、残念ながら自分のニーズとマッチするものを見つけることができたことがありません。一般市民の日常とは出発地や目的地が異なるであろう観光客にとっては、まだまだ鉄道やバスの代替手段にはならないかもしれません。自分の条件にあうものを見つけることができればラッキー、というところでしょう。

 C. 自転車をレンタルする  i. サイクリングのススメ
 小さなコミュニティの教会堂を訪れようとする際、鉄道駅やバス停から離れているのであればタクシーで、とつい思ってしまいますが、ここで私は敢えて自転車という選択肢も提案したいと思います。フランスでは日本より随分早いタイミングで都市部に自転車シェアリング・サービスが導入されています。また、サイクリングはフランスではとてもポピュラーなスポーツで、街を離れた国道を走っていると、多くのサイクリスト達が声をかけて走り抜けていきます。馬や牛、羊や山羊との出会いもあって、自然に囲まれた国道を走り抜ければ、日頃のストレスの解消にもなるというものです。
 ただ勿論歩く場合と同様、道はけして平坦ではないこと、走行可能距離は個人の体力に左右されること、更に天候の影響を受けることは理解しておいて下さい。


 ii. どこで借りるか、レンタルの流れ
 地方であっても中規模の都市であればレンタル・サイクルのお店がありますし、自転車販売店が専用の自転車を貸し出している場合もあります。オフィス・ド・トゥーリズムで尋ねれば、おすすめのお店を教えてくれるでしょう。また、オフィス・ド・トゥーリズムのデスクで自転車を貸し出している場合もあります。
 料金は、時間、半日、一日で幾ら、という計算で、更に機種により異なります。料金は先払いです。小物は無料と有料の場合があります。貸し出し台数には限りがあるので、特にオン・シーズンの場合には予約をする方が確実でしょうし(予約必須のところもあります)、また当日スピーディーに出発できるでしょう。借りる時間は万が一に備え、長めに設定しましょう。但し、貸し出し可能な時間は、レンタル先のの営業時間内に限られます。予約をしない場合、少なくともレンタル先の営業日と営業時間だけは確認しておきましょう。
 実際に借りる際には、パスポート等の身分証と、クレジットカードの掲示又は数百ユーロのデポジット(保証金)の支払いが要求されます。デポジットはカードでも支払い可能で、自転車返却時に返金されます。私は悪質な業者に遭遇したことはありませんが、念のため出発前にタイヤのパンクなど、自転車の状態は自分でも簡単に確認する方がよいでしょう。
 尚小さなコミュニティでは、レンタル・サイクル店を見つけるのは難しいです。適当な店が見つからない場合、少し離れても街としての規模が大きい街で探しましょう。



 iii. 利用頻度が高いならば
 連日サイクリングを予定しているならば、一日のみならず数日にわたって(期間の設定はレンタル先による)自転車をレンタルしましょう。一日単位でレンタルするよりも利用料金は割安となるでしょうし、そもそも毎日同じ手続きをする手間が省けます。鉄道や中・長距離バスでは自転車を載せることができる便が多いので(市内バスでは制限されている場合が多いです)、滞在する街で自転車を借りれば、目的の教会堂に最も近い駅やバス停迄自転車と共に移動することができ、下車してすぐに自転車で走り始めることができる上、宿泊先周辺では食料品の買い出し等ちょっとしたシーンにも利用できるので、その利用価値は大きいでしょう。
 但し鉄道やバスに積んで行った先でも利用する場合は、後々トラブルにならないよう、レンタル先には利用方法について事前に断っておいた方がよいでしょう。また宿泊先でレンタルした自転車を安全に保管できるガレージ等のスペースの有無についても確認をしておきましょう。


 iv. 電動アシスト自転車

 自転車の種類は、大別するとロード・バイクかマウンテン・バイクです。子供を乗せるワゴンを連結したタイプ、リゾート地等で稀に見かける2人乗りタイプ、勿論子供用の自転車もあります。そして力強い味方、電動アシスト自転車もあります。格好にこだわらないのであれば、私は断然電動自転車をおすすめします。
 小さなコミュニティの教会堂に行き着く迄には、森を抜け丘を越えて、という道程になり、時にはかなりのアップ・ダウンが頻繁にあったりします。どれほど事前に道の高低差をチェックしていようと、「まさかこれ程の登り坂とは思わなかった」という場面に往々にして出くわします。日頃体力に自信があろうとも、やはり旅の間、連日方々まわっていれば疲労も蓄積しているわけで、脚がどうしても重くなっています。そんな中、過度な無理を重ねると確実に翌日身体に響きます。その日のことだけでなく、中期的に自分のコンディションを考えれば、ひとつの賢明なチョイスだと思います。
 出発前にバッテリーの走行可能距離を必ず確認しましょう。自分の道程と照らし合わせて不安がある場合、その旨伝えれば、予備のバッテリーを用意してくれたり、バッテリーのグレードの高い自転車に交換してくれたりしてくれます。
 オフ・シーズンの期間、また利用者の少ないレンタル・サイクルのお店では、常にバッテリーの充電の用意が整っているとは限らず、充電のためだけに待たされたりすることもあります。そういう面でも自転車をレンタルする場合にも、特に小さな街では事前に予約を入れることをおすすめします。

 ちなみに私は最近は専ら電動自転車を選び、一日の走行距離は50キロを上限として2-3のコミュニティを周ります。これが赴いた先の教会堂でもしっかり見学ができる私の限界値です。


 v. 備品について
 参考までに自転車をレンタルする際の備品について記しておきます。
 フランスでは2025年現在12歳以上の人はヘルメットの着用義務はありませんが、着用は推奨されています。ヘルメットのレンタルは有料です。
 ちょっとした荷物を収容するための自転車に固定するサコッシュや、荷物を自転車に括り付ける紐のような類は、無料で貸し出してくれる場合もあれば、その用意がないところもあります。簡易空気入れまで無料で貸出してくれるところもあれば、用意はヘルメットのみ、とレンタル先によって備品については様々なので、気になるものがある場合には事前に問い合わせましょう。
 ちなみに長距離を走る場合、勾配が多くある道を走る場合には、グローブを自前で用意するとよいと思います(グローブの貸出は聞いたことがありません)。競技用のものでなくても、滑り止めがついている手袋のようなもので十分だと思います。


  vi. サイクリング・ルートの計画
 街中を周るだけなら、気の向くまま走っても恐らくどこかに辿り着くでしょうし、通行人に道を尋ねることもできるでしょうから、道に迷っても大事には至らないでしょう。しかし街から数キロ、それ以上離れたコミュニティまで出向くとなると、風の吹くままに、というわけにはなかなかいきません。
 オフィス・ド・トゥーリズムのサイトを覗くと、サイクリング・ルートの提案をしているページをよく見かけます。自分が目指す教会堂が含まれているコースを探してみましょう。それをもとにルートをアレンジしてもよいでしょう。オフィス・ド・トゥーリズムが提案しているコースは、より難が少なく設定され、随所に観光や絶景ポイント等が盛り込まれています。そして目安として、各行程について走行距離や所要時間が示されていて、初級者用、上級者向け、等とアドバイスがある場合もあります。ルートのマップはサイトからダウンロードできますし、また現地のデスクで紙ベースの地図を提供していることもあります。
 自分で一からプランニングする場合も、あまり難しいことはありません。地図を眺めていれば、自ずとルートは見えてくるでしょう。Google Maps等でも、ルート検索機能を使うと幾つか候補を提案してくれます。どのルートを選ぶかについては、距離、ルートのシンプルさのみならず、勾配も考慮するとよいでしょう。
 ちなみに実際の場面では基本的に、市街を抜けたら「某コミュニティへはこちら」という標識に従って国道をひたすら走り、そのコミュニティまで辿り着いたら、「教会堂はこちら」といった看板を探して、その通りに進めばよいという具合です。



 vii. その他:天候について

 ここで素人の私が何度かフランスでサイクリングを経験して気づいたことを記します。
 フランスには特別に雨季はありませんが、春は天候が変わり易いです。一日中雨が降り続いたという経験はありませんが、雷は激しく鳴ります。緑を除いて何もない広野を走っている時の雷鳴と稲光は、結構怖いものです。また、雨等で地面が濡れると白線の上は特に滑りやすくなるので、自ずとスピードが上がりやすい下り坂では気を付けて下さい。
 サイクリング当日は出発前に天気予報を確認しましょう。「〇〇の教会堂には旅のスケジュール上今日を除いて訪ねるタイミングがないから」と、サイクリングを強行したくなることもあるかもしれませんが、強い雨の予報の場合、長い時間雨が降る予報の場合には、潔く諦めてタクシーを探すか、行き先を変更しましょう。雨の日のサイクリングは事故のもととなり兼ねませんし、緊張と疲労が蓄積した身体には、相当なストレスがかかります。
 風も場合により強敵です。向かい風の時の抵抗は想像に難くないですが、追い風の時は自転車の制御を失いやすくなります。また横方向の風の場合には、バランスをとるのが難しくなって押し倒されてしまったり、タイヤが風にすくわれて転倒してしまったりすることもあります。とにかく注意を怠らないで下さい。
 歩くこと同様、体力に自信のある方、普段からサイクリングに慣れている方も、くれぐれも己の力をあまり過信せず、無理ないスケジュールでのぞみましょう。


 D. 都市部での自転車シェアリング・サービスについて
 レンタル・サイクルとは別に、近年フランスの都市部では、交通渋滞の緩和とCO2排出削減の取り組みの一環として、パリの「ヴェリブ Vélib'」をはじめとした、シティ・サイクルの貸し出しサービスが展開されています。実際の使用あたっては、料金を支払い所定のドッキング・ポイントに返却すればよいというものですが、その使用はレンタルした街の中とそのごく周辺域に制限されています。よって、このシェアリング・サービス用の自転車を鉄道やバスに積んで運び、指定域の外で利用することは禁止されています(鉄道車内やバスに積載すること自体禁止)。
 とはいえ、街中の観光スポット巡りに、食料品の買出しに等と、便利な足代わりとなってくれることでしょう。このシェアリングの自転車についても、数日間借りることもできるので、宿泊先で自転車を安全に保管できるスペースさえ確保できれば、利用の度にステーション或いはドッキング・ポイントに迄行って手続きする手間が省けます。


 E. 現地ツアーを利用する



 それなりの規模の街のオフィス・ド・トゥーリズムでは、様々なテーマで数時間から数日のツアー(多くはバスを利用)を主催しています。バカンス・シーズンになれば、そのバラエティも増えます。ツアーは基本的に目的地では自由行動で、決まった時間に集合して次の目的地へ皆でバス等で移動、という流れなので、目的にあったツアーがあれば非常に楽です。もし行きたい教会堂があるけれどもアクセスに難があるのであれば、まずその街或いは周辺の街のオフィス・ド・トゥーリズムに、ツアーについて問い合わせてみましょう。サイトで確認できる場合もあります。
 勿論ツアーにもスケジュールがあるわけですから、目的の教会堂でゆっくり座って心ゆくまで古に思いを馳せる、などということは叶わないでしょう。写真を撮ることに追われて終わってしまう、いえ、満足するだけ写真を撮る充分な時間すらないかもかもしれません。しかしオフィス・ド・トゥーリズム主催のツアーは価格面でも良心的ですし、利便性を優先させるならば、非常におすすめです。
過去に実際にあった現地ツアー(一例)
 ・エクサン・プロヴァンスから:セナンクのノートル・ダム修道院 Abbaye Notre-Dame de Sénanque とプロヴァンスの村々を訪ねる半日ツアー
 ・ペルピニャンから:サン・ミシェル・ド・クシャ修道院Abbaye Saint-Michel de Cuxaサン・マルタン・デュ・カニグー修道院Abbaye Saint-Martin duCanigou を訪れる一日ツアー
 ・クレルモン・フェランから:コンクのサント・フォワ修道院教会 Abbatiale Sainte-Foy de Conques に詣でる一日ツアー



 F. 旅のツール・Google Mapsやコンパスを活用する
 最寄りの鉄道駅・バス停から歩く、自転車でアクセスする際、道のナビゲーションは勿論紙の地図でもよいですが、自分の現在地と照らし合わすことができるオンライン地図サービスの利用がより便利です。勿論Google Mapsでなくても、お気に入りの類似のサービスでよいのですが、ここでは恐らく世界的に最も利用者が多いGoogle Mapsで話を進めます。
 歩く場合でもサイクリングの場合でも、事前に目的地の周辺地図をダウンロードしておきましょう。スマートフォンやタブレットのGPS機能をオンにしておけば、ダウンロードした地図に現在地が表示されるので、Wi-Fi環境が不安定な時でも安心です。常にオンラインの状況であれば、勿論ルート検索してそのままナビゲーションを利用して歩みを進めることができます。
 余裕があれば、事前にストリートビュー機能を使って、ルートをヴァーチャルで確認しておくとよいでしょう。必ずしも全て見る必要はなく、ポイントとなりそうな曲がり角等をチェックするだけでも充分だと思います。勿論全て記憶しておくことは不可能ですが、いざ現地で歩いている・走っている時に、ストリートビューで見たイメージがなんとなく脳裏に蘇ってきて、「そういえばこんな建物があったな」といった具合に、わざわざ地図を確認しなくても、自信をもって進むことができたりするものです。
 道に迷ったら誰かに尋ねればよいと思っていても、地方では市街地から一旦外れると、一軒の民家も見当たらない広野である場合もあれば、国道なのに数十分経っても一台の車も通らないということもあるので、何かしらの地図を用意しておくと安心です。


 その他、コンパスのアプリもインストールしておくと便利です。地図を片手に道が複雑に入り組んだ街中を散策している時などにも非常に役立ちます。


 G. 飲み物・食べ物の携行
 歩いて、自転車で街から離れた教会堂に行く場合には、暑い時期でなくても飲み物は携帯しましょう。街中から外れると、途中で調達することは容易ではありません。特にオフ・シーズンに小さなコミュニティにある教会堂をまわるなら、飲み物は必携です。たとえ目指す教会堂が有名な観光スポットであっても、オフ・シーズンには周辺のカフェやレストラン等が一斉にシャッターを下ろしてしまう所が多くあります。「観光を終えたらご当地グルメを」と思っていても、パン屋さえ見つからない場合もあります。そして街中に自動販売機はなく、ちょっとした商店等でさえもあちこちにあるわけではありませんし、見つけたところで昼休み中のためお店がクローズ等ということも往々にしてあります。鉄道駅の待合室等には概してドリンクや軽食の自動販売機が設置されていますが、それを当てにして駅に駆けつけても、列車の往来がない時間には駅舎が閉まっていることが地方の小さな街ではよくあります。
 荷物にならなければ、サンドイッチのような軽食を携帯すると安心でしょう。私はエナジー・バーのようなものと、ナッツやドライ・フルーツがぎっしり入ったチョコレートを必ず持ち歩きます。教会堂の外側・内部をぐるぐる歩いてまわって見て写真を撮るだけでも、想像以上にかなりの体力を消耗します。暑い時期には日本から塩飴の類を持参するとよいかもしれません。





 7. コンポステーラ巡礼を検討されている方へ
 近年、いわゆる自分探しの旅として巡礼に出る若年層が増加傾向にあるそうです。また巡礼の方法も様々で、徒歩のみならず、自転車での巡礼者も増えているそうで、巡礼の旅のスタイルも多様化しているようです。
 巡礼の旅の準備から、宿泊施設の案内までカバーしているサイトがあるので、興味がある方は下記のサイトを覗いてみて下さい。

 ・Agence française des chemins de COMPOSTELLE : https://www.chemins-compostelle.com/

 巡礼出発証明書 Créancial を取得し、巡礼手帳 Crédencial に教会堂等でスタンプを捺印して貰い、ゴールのコンポステーラで巡礼証明書を受け取る、忘れられない旅の貴重な記念となるでしょう。

 8. 教会堂にて
 A. マナー
 キリスト教徒でなくても、信奉者に対して、長い年月を経てきた遺産に対して、敬意を払うべきです。これはオトナとしてのマナーとも言えるでしょう。
 1. 飲食は禁止
 2. 声高に話をしない : 基本的に教会堂は神や聖人達等と向かい合う場所であり、静寂を求められる場所です。ミサの時間外でも教会堂には祈りを捧げる一般信徒、修道士や修道女もいるわけで、彼らの妨げになる行為は避けましょう。スマートフォン等での通話も控えましょう。
 3. カメラのフラッシュの使用は禁止 : 概して「フラッシュ禁止」のマークが目につくところにあります。稀にカメラの使用そのものを禁じているところもあるので、関係者を見かけたら声をかける方が無難です。
 4. 帽子はとる、ビーチサンダルの類の履物は避ける
 5. 肌の露出度の高い服は避ける : 女性のみならず、男性にもいえることです(夏場のタンパン、タンクトップ等)。
 6. ミサ : 観光客の参列をきらう教会堂もあり、観光客を堂内から閉め出すところもあります。参列できる場合には参加料と思って、幾らか寄付をする方がスマートです。


 マナーを順守しなくとも、直接誰かから注意を受けることはないかもしれません。しかし特に地方に行くとアジア人は稀少人種、望まずとも人々の視線が集まり、私達の素行はしっかり見られているものです。


 B. 写真にこだわる方へ

 写真を撮ることにこだわりがある方には、素人の戯言など不要だと思いますが、一応気づいたことを記しておきます。
 教会堂の外観の写真を撮る場合、夏季は建物の周囲の背の高い樹に遮られ、建物本体の全貌をとらえることが難しいことが往々にしてあります。冬は当然日照時間は短いですが、落葉樹は当然葉を落としているので、全体像をとらえやすいです。秋は気候として旅に適した季節ですが、想像以上に日が暮れるのが早く感じられることでしょう。
 教会堂内部については、やはり暖かい季節・夏季の方が観光客が多いため、特に有名観光スポットになっている教会堂ではシャッター・チャンスを狙うためにタイミングを見計らわねばならない場面が頻繁に生じ、その結果思いのほか見学に時間がかかってしまうものです。バス等のスケジュールがタイトな場合は要注意です。冬は比較的人出がまばらなので、教会堂の静謐な空気に包まれ思うがままに写真を撮れるだろうと思いますが、冬の教会堂内は圧倒的に寒いです。
 教会堂は照明設備が施されていても、やはり堂内は暗いです。特に彫刻のディテールまでしっかり写真におさめたいという方は、三脚を持参することをおすすめします。ちなみに室内の照明が故障のため点かないこともままあります(室内の照明は有料の場合もあり)。
 動画を撮る場合は、とにかく周囲の人の行く手を阻まないように注意しましょう。観光客は教会堂内で概して上方向を見ているもので、接触によるトラブルやちょっとした事故が起こりやすいです。





 9. ことば・コミュニケーション
 観光大国であるフランスでは、オフィス・ド・トゥーリズム、ホテルをはじめとする宿泊施設、交通機関、観光スポット等では、充分に英語が通じます。のみならず、小さな街に行っても、大概は英語で用を足すことができるでしょう。例えば地方の街中で通りすがりの人に道を尋ねるといったシチュエーションでも、日本よりも英語で事足りる場合が多いでしょう。
 ただ挨拶や「ありがとう」等といった簡単なフレーズは、フランス語で言えば相手の心証はよくなるというものです。これはフランスに限らず、どこの国においても同じことです。

 蛇足ですが、近年は随分減ったように感じますが、それでも時々、たとえホテルの受付のようなところであっても、「絶望的に感じの悪い(他に適当な表現が見つかりません)フランス人」にあたってしまうことがあります。アジア人に対するレイシズムといったレベルのことではなく、相手の別なく、愛想どころか微塵の対人スキルすら欠如しているのではないかと思われるフランス人が、老若男女問わずどこに行ってもいます。例えばちょっと道順を尋ねようと声を掛けた相手がそういうタイプの人だった場合、私達は限りなくいやな気分になるわけですが、そういう人達と相見えてしまった場合には、「単に運が悪かっただけ」と早々に気持ちを切り替えましょう。

 10. トイレ事情

 日本人にとって、やはりトイレはどうしても気になる問題だと思います。冬の教会堂内は本当に冷え込むので、特に女性には切実な問題であったりもします。
 私はパリの街中の公衆トイレを利用したことはありませんが、地方の都市部でも小さなコミュニティ(の中心部)でも公衆トイレはあります。鉄道のトイレ同様、そういった地方の街中の公衆トイレも、一昔前に比べてだいぶキレイに、衛生的になっていると思います。ただ紙と除菌ペーパーは常に持ち歩くことをおすすめします。
 問題は、必要に迫られた時にすぐトイレが見つかるかということかと思いますが、オフィス・ド・トゥーリズムが無料で提供しているコミュニティの地図等には公衆トイレの場所も明記されているので、早い段階で入手しておくと便利です。街中であれば、一杯のコーヒーと引換にカフェを探せばよいでしょうし、教会堂でも観光名所として有名なところであれば、敷地内にトイレがあります。とにかくトイレを見つけたら、必要がなくてもとりあえず入っておくことは基本です。
 それでもやはり、トイレが見つからないこともあります。恥ずかしながら私は、教会堂周りで造園をされている方の小屋でトイレを借りたことも、自転車レンタル店で従業員用のトイレを借りたことも、家屋の建設現場で仮設トイレを借りたこともあります。こういう時、「拾う神もいるものだ」などと巡りあえた人の縁に感謝するのですが、とにかく地元の人、その場所周辺に詳しそうな人を探して聞いてみるのが早道でしょう。


Bon voyage et bonne visite  à tous !


ページ最終更新日 Dernière mise au jour de la page : 2025.02.24